歴史
織姫塚伝説
涸沼川の下流に、深い淵がありました。深みに入った人は、百ひろワカメに巻かれ、九穴アワビに吸い付かれて殺されてしまうのだそうです。
江戸時代のはじめごろ、ご存知水戸黄門さまがやってきました。まだ、お若いころだったそうです。「多くの尊い人の命を奪うとは不届きしごく、いで退治してくれよう」と、下帯一本になり、この深みに飛び込みました。百ひろワカメを切りほどき、九穴アワビをなげうって、なおも進むと、遥か水底に不思議にも立派な家が見えてきました。中には大変美しい姫がいて、チャンカラコン、チャンカラコンと機織(はたおり)をしていました。その姫はふとそのてをとめて、「そなたは何者じゃ?ここになにしにきたのじゃ?」ととたずねました。「余は、水戸中納言光圀である。妖怪を退治にまいった」と声高らかにいいました。すると、姫は美しい頬にハラハラと涙を流し、「ここは、あなたのような高貴な方が来るところではございません。本来なら、命のないところなのですが、早々に立ち帰りなさい。」ときびしく言うのでした。光圀はやむなく、そのまま水面に帰ってきました。岸に案じていた家来たちは大喜びでした。
光圀は、水底の姫を大変にあわれんで、その川岸に立っている大きな岩石を織姫塚と名づけました。